障害者福祉政策の現状

様々な政策の進捗が問われる中で、障害者福祉政策の現状はどうなっているのかという声が上がっており、地元でも説明の機会を求められました。そこで、簡単に障害者福祉の現状について述べておきたいと思います。 2年前の政権交代した直後に、首相官邸に「障害者制度改革推進本部」という部門が立ち上がりました。この部門で、障害者制度総合福祉法を含めた法案成立のための有識者ヒアリングや論点の整理などを行うこととなり、平成22年の1月に発足してから今年の10月までの約2年間で、延べ36回に渡り議論を重ねています。この委員会には、自治体の首長や学者・専門家だけでなく、幅広く障害者団体の代表者も参加しているという点での特色があります。まさに、”Nothing about us without us(自分たちのこと抜きに自分たちのことを決めてはならない)”という精神に基づく構成になっていると思います。

まず、障害者権利条約の批准に向けて検討が必要な分野(雇用、差別禁止、虐待防止、交通アクセス、政治参加、教育、障害児支援)などの各分野の現状ヒアリングを行った上で、霞ヶ関の各省庁からもヒアリングを行って参りました。これまでの議論については全て首相官邸のホームページで公開されておりますが、かなり綿密に議論を重ねて来たことは間違いありません。しかも、昨年10月には内閣府の共生社会政策の政策統括官に村木厚子さんが任命され、障害者福祉を担当することになりました。

この部門の大きな目的と流れを言いますと、障害者権利条約の批准に必要な手当のまず第1歩として障害者基本法の抜本的な改正を行うということ。そして、次期障害者基本計画を策定することがまず大きな柱です。次に、障害者の差別禁止の法定化、並びに改革の本丸である、現状の障害者自立支援法を廃止して民主党がマニフェストで訴えた「障害者総合福祉法」を制定するということです。

しかし、制度改革推進本部で議論を始めたと言っても、既に障害者の皆さんは2006年に成立した障害者自立支援法の制定によって様々な弊害が生じている状況であり、総合福祉法の制定を行う前に緊急に法律の手当をする必要が生じました。これが昨年年末に成立した「つなぎ法」です。主な内容は、まず応益負担を応能負担に変えること。これが一番大切です。発達障害が支援の対象になること等を決定しました。

そして、今年に入って、制度改革推進本部が議論を取りまとめた内容に従って障がい者基本法を改正する予定でしたが、東日本大震災の発生によって審議が遅れ、最終的に今年の通常国会で、7月29日に全会一致で成立した法律です。国会がとても蒸し暑い中で成立したことを良く覚えています。障害者基本法の改正で大きな内容は、障害者の定義を見直したこと(身体障害だけでなく社会的障害を定義。医学モデルから社会モデルへの明確な転換)、差別の禁止を明文化したこと(障害者権利条約批准の絶対条件)、相互に人格と個性を尊重し合いながら強制する社会を実現すると目的規定を見直したこと(インクルーシブの理念を法定化)などです。

今後、この改正に基づいて来年からの障害者基本計画も制定されるため、障害者福祉政策の土台の整理までは漕ぎ着けたという状況です。さて、そこで障害者総合福祉法の制定ですが、当初の予定では遅くとも来年の通常国会に提出して8月までの施行を目指しています。そして、その法案の骨子についても制度改革推進本部の総合福祉部会にて今年の8月30日に取りまとめが行われ、後は法案を提出するのみという状況になってきました。しかし、そこで現在ちょっと待ったが掛っているのが現状です。

理由は、東日本大震災の発生による補正予算の審議が最優先されたこと。次は、本来通常国会で終えておかなければならなかった公務員制度改革、議員定数の削減、派遣法の改正、郵政改革関連法案などの重要法案がまだ積み残しとなっていること。そして、社会保障と税の一体改革という、まさにこの国が今後進むべき社会保障と税の在り方における決定を間近に控え、最優先項目となっていること。TPPを始め日本の経済連携の進め方を決める大事なタイミングであることなどなど、今本当に日本が正念場を迎える中で、全ての重要事項を決定しなければならない状況の中にあり、国会は今大渋滞の状態であると言えます。

しかし、そのような大事な状況の中で、私が許せないと思っているのは、そうした法案の審議よりも、野党がとにかく国会を解散させようともくろんでおり、大臣の問責を始め次々と審議を妨害するばかりか、法案に対して難癖をつけて反対する理由を重箱の隅をつついて見つけようとしていることが毎日の状況になっています。まさに、障害者の方々こそ、与野党のゴタゴタの最大の被害者です。

平成24年度の予算の概算要求が既に公表されていますが、厚生労働省関係で障害者福祉の予算は来年度1兆2,679億円です。しかも、皆さんにとって一番身近な部分の地域生活支援事業である、相談支援センターや児童支援センターの充実に510億円、発達障害に対しても新たに8.8億円の予算を計上するなど、苦しい財政の中で、制度改革推進本部で実現すべきとされた項目を少しずつですが充実させています。この予算をなんとしても通さなければ、障害者の方々の安心した生活は実現致しません。

日本の障害者福祉に関する予算の対GDP比では、日本はOECD加盟国の中で18位であり、決して高くありません。OECD加盟国の平均水準に合わせるためには、現在の予算をほぼ倍にしなければなりません。それでもまだ平均水準です。社会保障と税の一体改革が議論される中、どの項目の予算も非常に厳しい状況になっています。しかし、医療や年金が世界の水準と比べてトップランナーを走っている状況下の中で、障害者福祉に関しては必ずしも先進国とは言えない状況です。まず、そうした事実を知ることから始めることが大切だと考えます。

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